
田端信太郎が語る、プロのPRマンの手口と美学 「ZOZO前澤 × 本田圭佑」「トランプ vs 金正恩」「湾岸戦争」etc.
たとえば、新型コロナウイルスは、中国・武漢の研究施設から広がったという話がある。CNNが「アメリカ政府が検証を始めた」と報じ、4/17に日本でもニュースになった。
一方、中国外務省の趙立堅報道官は、ウイルスはアメリカ軍が武漢に持ち込んだ可能性をTwitterで指摘している。
2/2 CDC was caught on the spot. When did patient zero begin in US? How many people are infected? What are the names of the hospitals? It might be US army who brought the epidemic to Wuhan. Be transparent! Make public your data! US owe us an explanation! pic.twitter.com/vYNZRFPWo3
— Lijian Zhao 赵立坚 (@zlj517) March 12, 2020
みなさんはどう感じただろうか? まず、新型コロナは中国発だという認識は、日本人の中では割と一般的なものだろう。また、アメリカと中国の対立も、おなじみのイチャモンのつけあいだと、大して気にもならないかもしれない。
だが、慣れない自粛生活とオンライン化に四苦八苦して、思考停止していると、情報操作、印象操作に、翻弄される結果になるかもしれない。なにしろ、国内はもちろん、世界中が混乱している。
そこで今回は、これまで非公開だった田端大学のコンテンツから、戦争すら現実に引き起こしてしまう、プロのPRの世界を紹介する。これまでにないコロナ時代の今だからこそ、得られるヒントがあるかもしれない。
※「田端大学 ブランド人学部」2018年10月22日に実施された、第5回ゼミ・田端信太郎の講義より(書き起こし:大森陽介、編集:寄金 佳一)
課題図書「ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争」(高木徹 著)
フェイクニュースはインターネット以前の昔から存在していた
田端:(2018年10月当時)私は半年くらい前から、ZOZOでは広報の責任者なのですが、「ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争」は広報やPRというものを考えるうえで、最も衝撃を受けた本の一つです。
読む前と後で、世の中の見え方が違う本って時々あるんですけど、この本もその一つです。
皆さん、北川景子さんが主役の、フェイクニュースというNHKのドラマを知っていますか?
最近、新聞記者の人達とかで、
「インターネットやFacebookやTwitterみたいなSNSはフェイクニュースでいっぱいだ!」
と言う人がたくさんいるじゃないですか。ほんとスリッパで頭をはたきたくなりますよね。お前は、アホか!?
インターネットやソーシャルメディアが出てくる前から、フェイクニュースなんて、ありまくりなんですよ。
インターネットが出てきたせいで、フェイクニュースが拡散されてけしからん!なんて言っている新聞記者の頭をパカーンっと、スリッパで叩きたい。
お前の言っていることがフェイクニュースだろ!みたいな。
湾岸戦争:イラクは悪者に仕立てられた?
田端:この写真知ってます? 湾岸戦争の時にですね、イラクが油田の油を海にまきまくったから、油まみれの水鳥になったと言われている写真があるんです。
この水鳥は、誰の仕業だか本当はわからないんです。でも、油まみれの水鳥って可愛そうですよね。ただ油で汚れた海を写すより、全然センセーショナルですよね。
「ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争」の中でもチラっと紹介があったんですけれども、湾岸戦争の時にイラクがいかに悪いかをアピールする証言として、「ナイラ証言」という重要な証言があって。
ナイラという当時15歳の少女の証言なんですけど、イラク軍の兵士が、クゥエートの産婦人科に乱入して、保育器に入ってる新生児20〜30人を、全員床に投げ捨てて、
「子供達が死んでしまった!なんて酷いことをするんでしょうか!イラク軍の兵士は!!」
という話があったんですよ。
今から話すことは、Wikipediaとかの受け売りなんで、本当の客観的な事実・真実がどうか、私も分かりません。真実や真相は分からないという前提で話します。この前置きを置くことが、せめてもの誠実さかなと思いながら話しますね。
湾岸戦争というのは、そもそもイラクがクゥエートに攻め込みます。クゥエートをほぼ1日で制圧します。それに対して、酷いじゃないか!と国際世論が盛り上がって、アメリカを筆頭とする多国籍軍がクゥエートを取り戻すために、戦うという構図でした。
その時にイラクや、その指導者であるサダム・フセインが、いかに酷いかと示す有名な証言として、このナイラ証言というのがありました。
当時のアメリカの大統領、ジョージ・ブッシュ。イラク兵は信じ難い野蛮な行為をおかした。1990年11月の発言ですね、湾岸戦争は年明けに起こっています。だからイラクを責めるのは正義にかなっている!と。
この本に出てくるRuder Finn(ルーダー・フィン社)はプロの仕事をしたと思う。
雑なやっつけ仕事をしたのは「ナイラ証言」で、Hill+Knowlton Strategies(ヒル アンド ノウルトン ストラテジーズ)という、PR・コンサルティング会社です。
さっきのナイラというのは、クウェート駐米大使の娘だったんですよ。これは何を意味しているかというと、要は身内を使って、ヤラセの証言をさせた可能性があるということです。
このナイラという女子が現場とされる産婦人科に行ったことすらあやしくて、100歩譲って、行ったとしても、ちらっと新生児室を見たくらいだという以上の証拠がないんです。
だとすると、この証言は何だったんだ!ってことになるんですよ。ところがアメリカ大統領は、ナイラ証言を信じて、「イラク兵は信じ難い野蛮な行為を〜」と言ってしまったものだから、湾岸戦争は起こってしまった。
(中略)
「あらゆるニュースには、PR会社の手が入っているかもしれない」との視点を持つべき
田端:「Hill+Knowlton Strategies」は、有名なPR会社で、今でもあります。西新宿だったかな(編集部注:オフィシャルサイトを確認したところ、恵比寿でした)。日本法人にも30〜40名の社員がいるみたいです。
何が言いたいかっていうと、こういう情報操作や嘘八百を過去に仕込んだことのあるPR会社というのは、今でも日本で営業を継続してて、彼らのホームページを見ると、「フォーチュントップ500のうち半数が、僕らのクライアントです」って言ってます。
「Hill+Knowlton Strategies」だけを矢面に立たせて血祭りにしたいわけではなくて、「Burson Marsteller」(バーソン・マーステラ)とか、ほかにもいっぱいいるわけですよ。
「Burson Marsteller」というのは、原発事故があった後、原発プラントメーカーのPRを受けたりとか、ナイジェリア政府が、大量虐殺を行ったという申し立てを受けた時に、政府の依頼に応じて、申し立てを否定したりとか。
何が言いたいかというと、PR会社って半分武器商人みたいなもんなんですよね。確証は全くないドタ勘だけど、今も、例えば原発再稼働のために、雇われているPRエージェンシーが、今の日本にもいても不思議ではない。
それが悪いってことではなくて、そういうもんだという現実を受け止めたうえで、ニュースを見るってことが皆さんのメディアリテラシーをあげるうえでとても重要だってことです。
2018年最大のプロレス「トランプ vs 金正恩」
田端:「ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争」を読み込んだ皆さんに、僕が言いたい2018年最大の情報操作というと、少し大げさなんだけど、印象操作について話したい。
印象操作とは、つまり「プロレス」なんです。わかりますか? 2018年に世界中が注目する最大の政治外交プロレスショーが行われたの、皆さんわかります?
トランプ氏、金正恩氏に非武装地帯での握手を呼び掛け
— ブルームバーグニュース日本語版 (@BloombergJapan) June 29, 2019
https://t.co/kBDP96mlfu pic.twitter.com/s3ico6hB7F
役者は「トランプ」と「金正恩」です。
これ、格闘技の猪木 vs モハメドアリみたいなもんです。プロレス好きの人にはこれで、わかってもらえるとは思います。
もともとトランプ大統領は、国連総会で、金正恩のことをロケットマンと呼んでいます。その後、すぐに更に馬鹿にして、リトルロケットマンって言うんですけどね。あいつは自殺に向けて突き進んでいる!と。
それに負けじと金正恩は、トランプ大統領のことを「米国の老いぼれの狂人」「狂人がラッパを吹き鳴らした」「火遊びを楽しむらなずもの、チンピラ」と言ってるわけですよ。
トランプはWWEで実際にプロレスをやっていた
田端:まあ、こういうのはプロレスのマイク芸みたいなもんですよね。トランプってみんなアメリカの大統領になってからしか知らないでしょ?せいぜい不動産屋としか知らないでしょ?トランプって昔、何やってたか知ってます?
WWEというアメリカのプロレス団体があります。
このプロレス団体に、ビンス・マクマホンというオーナー(代表取締役会長・最高経営責任者)がいるんですけど。
このオーナーと、トランプの間で、
「オマエ、ヅラだろ!」「いや、そっちこそズラだろ!?」
っていうよくわからない舌戦バトルが盛り上がって、「オマエ、ヅラだろ!!」っていうバトルを兼ねて、お互いの代理戦争みたいに、好きなレスラーをリングにあげて、負けたほうが、髪切りデスマッチというのをやったんです。
これ、2007年(4月1日のレッスルマニア23)のことなんですけど、トランプが勝ったんですよ。
で、ビンス・マクマホンが、トランプが高々と上げたバリカンで、頭をガーって、やられたんです。しかもこの後、頭にシェービングクリームを山盛りにされて、キノコみたいになって頭を剃られたんです。
で、俺はこれを見てですね、ビンス・マクマホンってすげーなって思ったんです。これビリオネア(億万長者)バトルと騒がれてね、トランプもビンスマクマホンも、その時すでに大金持ちなんですよ。トランプはニューヨークの不動産王でしょ。
ビンス・マクマホンは、WWEというのは、プロレス選手同士の対立軸をさんざん盛り上げといて、最後、決着がつくっていうときに、有料放送で、ペイパービューにするんですよ。
わかるこれ?すごくない?アホなアメリカ人、騙されて見るよね。
ビリオネア同士のバトルに負けて、ビンス・マクマホンは、髪を切られるんだけど、髪を切られて、視聴率が上がれば上がるほど、結局はビンスマクマホンが儲かるわけじゃん。やっすいもんですよ、髪の毛くらい。
彼はスポーツの興行主とか、エンターテイナーとして本当に凄いと思うんです。所詮、自分の髪の毛じゃん。首をはねられる訳でもないし、切腹させられるわけじゃないし。
で、こうやってトランプは嬉しそうに髪を切ってるんです。で、この辺りから、俺は、トランプっていうのは、プロレス的な文脈を100万%わきまえている人物だと思っていたわけです。
トランプ vs 金正恩をプロレスとして眺めてみると……
田端:トランプと金正恩が会うってなった時の1週間前、何があったか知ってます?
突然、トランプは会談中止を通知するんです。「オマエの最近の発言が気に入らないから、俺やっぱり会うのやめた!」ってことです。
ところが、それを連絡するために、トランプが金正恩に送った手紙があるんだよね。で、その送った書簡の文面を見た瞬間に、絶対にトランプは、本気で会うのをやめるつもりがないとわかったわけです。
だって、最後に「考え直したら電話か手紙をくれ。」とか書いてるわけですよ。
あるいは「俺はオマエと会うのを楽しみにしている。」とも書いてある。どんなシグナルの送り方なんだと。
しかし、突然、会うの辞めた!と言われてビビった金正恩はNo.2をすぐにアメリカへ派遣しました。
そこで、「いやいやいやいや。俺はそんなつもりはない!別に会ってやってもいいんだ。」となりました。
ここらへんの間合い、駆け引きが実にプロレス的です。で、じゃあ考え直した。シンガポールで会おう、となるわけです。
シンガポールへ向かう直前、エアフォースワンに乗り込む前のトランプ大統領が言った言葉。
「金正恩が真剣かどうか1分でわかる。チャンスは1度限りだ。」
煽るね〜!!煽るよね。
戦争の危機を煽って、自作自演で防いで「ほら!俺ら、凄いリーダーだろ!?」
田端:しかもこの、金正恩対トランプの両ヤクザに挟まれている一般市民、韓国&日本が迷惑してます。
本当にこいつらさ何なの、北朝鮮のミサイルとか日本の上空を飛んで、明け方にJアラートとかなって、携帯とかアラームなったでしょ。
さすがの鈍感力の俺も、まじでヤベエ?!と思うよね。
アメリカまでミサイルが届くとかも?って言ってるけど、ソウルなんて砲弾が届くんだよ。38度線って、ソウルからすると、東京から横浜くらいの距離なんですよ。
日本と韓国はマジでダチョウ倶楽部だよね。「喧嘩するなー!!」「絶対、撃つなよ撃つなよ!」って。
で、トランプと金正恩が会う前哨戦として、この板門店での南北首脳会談があったわけです。トランプと金正恩が会う2週間くらい前。
これさ、おっさん同士の抱擁にしては、仲が良すぎでしょ。これわかる?韓国と北朝鮮って、もともと同一国家なわけよ。
日本でいうと、JR西日本と東日本で国が別れてしまった……っていうもんよ。同じ民族なわけですよ。どっちもキムチが好きで冷麺が好きでね。
それが、頭のおかしい白人の不動産屋のせいでね、戦争させられたらかなわん。俺らお互い同胞だから、愛し合ってるから、余計なことすんなよ!ってね。
この写真は韓国大統領府からの提供なんです。この意味わかります?
なんで、わざわざオッサンが抱き合っている写真をさ、韓国大統領府が各国のメディアに提供するの? 国際世論、国際メディアに「僕たちは戦争したくありません!」と全身全霊でアピールしているわけよね。
北朝鮮とアメリカの対立で、もし戦争が万が一起こったら、一番とばっちりをくって、割をくうのは、韓国ですから。
これ正しいよ。実に正しい。その通りだと思う。本当に戦争だけは勘弁してくれよ!という思いが、この写真に滲んでいる。だってこんなに韓国と北朝鮮が抱き合っているのに、もしかしたら、1〜2週間後には戦争になってるのかもしれないんですよ。
そん時、悪いのは誰ですか?はい、アメリカ人です。韓国人は別に戦争は望んでなかったんですよ!という精一杯のあるアリバイを作ってるよね。
で、すったもんだあったんだけど、シンガポールで皆さんご存知のとおり、会うわけです。で、どうなったか。
金正恩委員長は、「会談を歴史的な出会いと評価し、トランプ大統領となら共にやり遂げることができる」とコメント。散々、「米国の老いぼれの狂人」「火遊びを楽しむならず者のチンピラ」とか言ってたのに。
一方、トランプは、「金委員長は、とてもいい人だ。頭が良く、優れた交渉力と才能がある。自分の国を愛している」とコメント。
ずっこけるよね、おい、お前、あいつのことロケットマンって言ってただろ〜〜!と突っ込みたくなる。
さらに最近では、なんて言ってるか知ってます皆さん?「トランプ氏、金正恩と恋に落ちた。」英語で同じように、fall in loveなんですよ。Fall in love です。Fall in love 。もうスリッパで頭はたきたいですよね。
トランプと金正恩という偉大な二人の指導者のリーダーシップで、世界は戦争の危機から免れた、チャンチャン♬って感じ。
そもそも、お前ら二人が、戦争の危機を煽っておいて、それを自作自演で防いで、「ほら!俺ら、凄いリーダーだろ!?」って言ってるみたいなもんですよ、有る意味ではね。
(中略)
鉄則:PRの世界では嘘は絶対についてはいけない
田端:PRの世界で、一番やってはいけないのは、客観的に、事後的にバレてしまうような嘘をつくことです。これは、下の下。
鉄則、PRでもマーケティングでもブランディングでも、嘘は絶対についてはいけない。
ただ、嘘をつかなくても、いくらでも印象なんか作れるんですよ。ほんと、いくらでも作れる。
それをやるのがPRマンの仕事のなのに、安易に、嘘をついて印象を作ろうとするやつは、もう同業者として、飛び蹴りしたいような雑な仕事のやり方ですよ。
日本が誇る文化。能、能面。これ、同じお面だってわかります?上から光を当てているのが、向かって左。下から光を当てているのが、向かって右。
同じ顔に見えます?見えないですよね。これね、事実は一つなんですよ。客観的な形状とか物体、物理的な物体としての能面は一つなんですよ。
要は何が言いたいかと言うと、印象なんて、光の当て方しだいで、どうにでもなるということです。
「ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争」を読んでいただいた人はわかると思うんですけど、この強制収容所の写真ね、有名なイギリスのITNのクルーが撮った写真。
鉄条網があるのは嘘じゃないし、ヤラセじゃないんですよ。
でも、実は、この鉄条網って、別にこの人たちを閉じ込めているグルっと取り囲むような鉄条網じゃないんですよ。たまたま鉄条網越しに、痩せた若者の写真が撮れてただけです。
とはいえ、嘘じゃない。さて、このように、うっかり広まりかけた、一面の事実をいかに利用するかですよ、PRのプロの腕の見せ所は。
この本でいうと、この構図での写真は、主人公のジムハーフがわざと撮らせたわけじゃない。
わざと撮らせたわけじゃない、たまたまこういう構図の写真や映像が世の中に配信されたことを最大限に利用して、印象を操作するのが、プロのPRです。
(中略)
ZOZO前澤 × 本田圭佑:情報の拡大再生産が戦略的に行われていた
田端:最後に、田端大学の塾長である田端が、言える範囲でやってる情報操作を紹介しましょう。
まぁ、言える範囲ね。全部言ったらプロじゃないから。言える範囲だから、ほんと可愛いもんですよ。
誰だかわかります? 本田圭佑ですよ。本田圭佑さん、ワールドカップ(2018年ロシア大会)の前は、日本代表を自分の意見で組織したみたいに言われていました。
ところが、実際にワールドカップが始まると、日本代表がめちゃくちゃ活躍したじゃないですか。最後、ベルギーに負けたんでしたっけ?ベスト16まで行ったけど。
シンジ、メディアには関係悪化されるような書かれ方を沢山したけど、俺はずっとお前を認めてたよ。 pic.twitter.com/spm1tAPGgC
— KeisukeHonda(本田圭佑) (@kskgroup2017) July 5, 2018
最後に日本代表の選手が集った打ち上げがあったんですよね。で、本田と香川は、ライバルじゃないですか?メディアでは、二人は仲が悪いなど散々言われて。
ところが「真司、メディアには散々な書かれ方をしたけど、俺はずっとお前を認めてたよ。」ってそう言うツイートです。
で、この写真を見て、僕がどう思ったか?サッカーにあまり興味のない僕がどう思ったか。
「あれ?このジーンズのウォッシュってプライベートブランドZOZOのデニムじゃない?」って。
気づけば、これを情報の拡大再生産に使えるんですよ。嘘を言ったらいけないんだけど、引用できる真実を、最大限に利用する。
これを見て、すぐにLINEで、前澤さんに連絡して、「前澤さん、あれはどう見てもZOZOのデニムのような気がするんですよね」と。
本田さんと前澤さんは面識があるんですよ。LINEか何かで聞けますか? ここで、勝手に乗っかっちゃダメですよ。ここですぐに先走って許可なしに拡散するのはダメ!マナー違反!!
前澤さんから、本田さんにLINE入れてもらって、「ありがとうございます。これ、ZOZOのデニム履いてもらっていますよね?」ってことを確かめた上で、言ってもいいですか?と。聞いてもらいました。
そしたら、実際にそうです!良いですよ、言っても!と返事が来た。
本田さん、ZOZOのスリムテーパードデニム履いてくれてる!!ありがとうございます。感動のW杯もお疲れさまでした。今後のご活躍も期待してます。また近々お会いしましょう! https://t.co/JRe5iRTINn
— Yusaku Maezawa (MZ) 前澤 友作 (@yousuck2020) July 6, 2018
本田圭佑なら、いくらでも高い服を買えるわけじゃないですか。ところがなぜか、履いてくれてたのは3,800円のZOZOのデニムです。これは、好きで履いているに違いないということになるじゃないですか!
お金が高いとか安いとか関係ないと。ということで、「本田圭佑の高感度の爆上げが止まらん」と。
ロシアW杯前は極悪人みたいな扱いよ。連日、メディアに叩かれて、アイツは自分を日本代表にするために、ハリルを解任したとか。何て奴だ!と。
普通は監督が選手を解任するけど、選手が監督を解任するなんて前代未聞だ!なんて言われたんですけど。
結果的にどうなったかって言うと、本田圭佑の株も上がる。ZOZOの株も上がる。前澤さんの株も上がる。誰も被害者いないじゃないですか?この構図。
こういうことを演出するのが、PRのプロってやつです。情報の拡大再生産のプロです。これね、ごくごく一部です。
人物イメージはメディア越しに作られている
田端:皆さんに今日、言いたいのは、逆に株を下げる方の情報操作を食らったと思うのが、ムハンマド王子ね。
ムハンマド王子だってついこの前までは、サウジアラビアで、女性の運転を解禁しました!映画館での男女同席を解禁しました!なんて進歩的な王子様なんでしょ!
33歳。若きプリンス。流石に若い人は話が違うなー!っと。今の日本の小泉進次郎みたいなもんすよ。でも、この事件のせいで、一夜にして、極悪人みたいになっちゃった。
だけどね、僕も散々ね、皆さんからね、田端さん怖い人って、言われますけどね。会ってみたらどうですか?
何が言いたいかって言うと、ほとんどの人って、だいたい有名人と直接会ったことがないわけですよ。99.9%。
メディア越しに「人物イメージ」というものは作られているわけです。それを真に受けずに、本当のところはどうなんだ?って常に疑い続けることこそ、正しい態度です。
俺も真実は、わからないけど、ムハンマド皇太子だって、本当に悪人かもしれないよ? 俺は、全然かばう気持ちも、理由もないけどさ、言われてるほどそんなに悪人なんですかね〜?
こういう態度が、正しいメディアリテラシーだと思います。
単純な構図を信じ込んだ瞬間に、思考停止が始まる!
田端:皆さんも、「ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争」を読んだらわかるけど、ボスニアヘルツェゴビナが一方的な被害者で、セルビア人が一方的な加害者だっていうのは違うって、わかるじゃないですか。
今日の話も一緒じゃん、何が違うっていうんですか? というのが正しい猜疑心ですよ。
要はフェイクニュースの何が真実かとか、何が正しいとか、誰が善玉で、誰が悪玉とか、単純な構図を信じ込んだ瞬間に思考停止が始まるということです。
もちろん、田端が言ってることだって正しいかどうかわからない、と思っていただきたい。
デカルトが言いました。「われ思う、故にに我あり」。どこまで疑っても、自分自身の存在が疑いなんじゃないのか。という風に思ったところから、近代哲学は始まってるわけで。
格調高く締めましょう、今の笑うところじゃないですよ!!って、今日の会は閉めようかなって、思います。