
「D2Cはメディアと近い」Instagram3ヶ月で1.6万フォロワー超え!ヴィーガン事業を展開する小野寺さん、海外トレンドプロダクトの立ち上げ方
[文:チェルシー]
あなたは世界で「ヴィーガン」が広まっている理由をご存知でしょうか。「ベジタリアンとどう違うの?」という人も多いはず。
平成30年の訪日客3119万人のうち、ベジタリアンかヴィーガンは約5%と言われ、東京オリンピックでもヴィーガン対応が議論される等、インバウンドビジネスをやってる人にはマストのテーマです。
そして、世界での流行が日本にも展開されることもあり、今後知っておくべきトレンドの1つがヴィーガンなのです。
あなたが日本でヴィーガンのような日本での黎明期プロダクト立ち上げをするなら、どうやって販売戦略を立てますか?
「ヴィーガンのような新しい文化のプロダクトはどう日本で立ち上げていくのがいいの?」
「黎明期の事業立ち上げにおいて、Instagram等のSNSをどう活用していけばいいの?」
田端大学のMVPであり、NY・東京を拠点にライフスタイルを展開する小野寺聡さんに、ヴィーガン等の海外トレンドビジネスのマーケットの選び方・日本での事業立ち上げ方を聞いてみました!
インタビュー:小野寺聡氏(Twitter名:Satoshi Onodera)
NTTデータ、メルカリを経て、Vegan事業で起業。株式会社Reinvent代表。田端大学MVPの中でも、最もフォロワー数の多い人物。Satoshiのソーシャルメディア研究室(ソシャ研)というオンラインサロンも主宰。note「普通の会社員がツイッターフォロワー10,000に到達するまでに行った全記録」も多く読まれている、SNS活用のプロ。
Instagram 3ヶ月1.6万フォロワーには、10アカウント運用の検証があった
ー小野寺さんが今年立ち上げたヴィーガン事業について教えて下さい!
小野寺:「Happy Quinoa」というヴィーガン・プラントベースメディアを2020年7月から運営しています。
また、Webメディアに加え、Instagramは開始3ヶ月で1.6万フォロワーを超え、定期的なミートアップを開催するなど濃いコミュニティ形成を行って来ました。
2020年11月に国内外400のプラントベース商品を取り揃えたオンラインセレクトショップ「Vegan Select Shop by Happy Quinoa」をリリースしました。
ー近年流行しているD2Cビジネスということでしょうか?
小野寺:弊社は必ずしもD2C※という形ではなく、どちらかというとメディアから始まった会社です。
※ D2Cとは?
D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、”消費者に対して商品を直接的に販売する仕組み”のことを指します。すなわち、自社で企画・製造した商品を、ECサイトなどの自社チャネルで販売するモデルのこと。
ヴィーガンはまだまだ黎明期。そんなに知られていないし、情報が少ないので、メディアから始めたんですよ。私自身もプロダクトを作った経験があるというわけでもなく、もっとSNSの関心のほうが高く得意としていたので。
私自身も、2019年からNYでヴィーガンのライフスタイルを始めています。私は健康の文脈からヴィーガンを知り、そもそもヴィーガンとは何であるのか、ということを知ることから始め、NYでコミュニティ形成やアプリ開発、D2Cと呼べるほどのものでないですが、自分で商品を開発して免許取って販売するなどの事業立ち上げを一年ほど行っていました。
日本ではまだまだ認知が大きくない、様々な解釈がある(良くないイメージもあったりする)ということから、自分たちの得意としているメディアから始めました。
メディアはお客様とのコミュニケーションを取るツール。そこでファンづくり・コミュニティづくりから始めて、別のビジネスに派生させていこうと考えています。
ー最初の黎明期のプロダクトや文化というのは新しくて、とても難しいと思うのですが、日本でどのように始めたのですか?
小野寺:最初はやはり情報の格差じゃないですが、(テックのこともそうかもしれないですが)、該当の分野が社会に浸透しているいわゆる「震源地」の方が多くの情報に触れやすい環境であると考えています。
例えば、シリコンバレーのテックトレンドが数年経って世界に広まる、といったものと同じで、インターネット時代といえど、数年遅れて伝わってくるというのはあると思います。
なので、アメリカやNYの話であったり、海外でこんなトレンドがありますという話に限って見ても、そういったことに関心がある日本の方にも響くところはあるのだと思います。
最初は、Instagramもアカウント10個ほど運用していました。当時Instagramのヴィーガン領域のアカウントのトップでも数万フォロワーぐらいいたので、このカテゴリーは伸びるだろうなと思いました。
あとはやり方を模索しようと思って、色々これがいいんじゃないかなという仮説を含めて10個アカウントを作りました。その中で、運用・発信を微妙にずらしていきました。
例えば、今のヴィーガン・プラントベース関連アカウントで言えば、映像などを伴って発信をするアカウント、レシピなど生活に身近なところから伝えるアカウント等、様々なものがあります。
その中で、敢えて人ではなく、うさぎのアイコンを用いて、私たちが大切にしている価値観である優しさや暖かさ、多様性を伝えることが一番しっくり来るなと思い続けてきたところ、反響をいただけたという形です。
ー10個アカウントを運用して、うさぎが一番良かったんですね!なぜ良かったのでしょうか?
小野寺:これは仮説でしかないですが、ひとつは人間ではなくキャラクターであったということと考えています。うさぎは草食動物であり、イメージともマッチしており、より伝えたい価値観を出しやすい、と気づけたことは大きなことでした。
二つ目に、発信の方法については、写真のみならずテキストも用いたものとしました。Instagramは今までの「映える」というよりも、より情報としての機能も持たせ、テキストを交えた発信がトレンドになっていくんじゃないかと思ったんですよね。
三つ目は、コミュニティを作りたいという思いから、コメントやメッセージも密に返していました。優しさ・あたたかさを持って接するということを意識していました。
ー逆に10個あるなかで、これはいけると思ったのに全然伸びなかったものはありますか?
小野寺:食と健康だったりとか、ライフハック等もやったのですが、伸びなかったですね。
D2Cを調べたら多くはメディアカンパニーと考えた
-Instagramのアカウントは1つだけ始めると言う人が多いと思いますが、10個という数は最初から決めていたのですか?
小野寺:Instagramはツイッターなどと異なり、いわゆるストック型のSNSであるため、いつそのアカウントを見に行っても、タイムラインとして過去の投稿が並んで見えるじゃないですか。そのため、まずタイムラインを9個作ることから始めます。
タイムラインがあると、アカウントの世界観や方向性が見えると思います。それでもう大半が決まるのではないかと思い、例えば10個アカウントを作っても、そこでニーズがあるか否かはある程度わかります。
これらで初期のニーズが分かり、また発信の方向性を検証することにも繋がりました。
また、元々でいうと、商品を作りたかったという思いがあり、D2C(DNVBとも呼ぶ)のことを2018年頃から深く調べていました。NYのオフィスも、こういった企業が旗艦店としてリアル店舗を出店する、マンハッタンのSoHoに構えており、リアルとオンラインの双方で、どういった取り組みを各社が進めているのかを研究し続けました。
そこでの気付きが、D2Cであればあるほど、メディアカンパニーなのではないかという仮説です。ファンを作って、そこからファンとコミュニケーションを取りながらプロダクトを作る進め方が良いと考え、自分が得意なこともメディアであったので、このやり方でやろうと。
ーECサイトの立ち上げについてはどのように行ったんですか?
小野寺:ECサイトで国内外のヴィーガンアパレル商品を多数購入できるサイトは、おそらく日本には数多くないのですが、当初はやるつもりはなかったんです。しかし、Instagramを運用していく中で、フォロワーの方々が、アパレルに高い関心を持たれていることが分かりました。
それはヴィーガンのオウンドメディアで海外のりんごで出来た靴、パイナップルレザーの財布等の特集を出した時に、それが2000 likeとか伸びて、「ほしい!」というコメントが多くありました。
ヴィーガンのアパレルはBUYMA等で買えるようなものも一部あるのですが、海外輸入となり、1ヶ月ほど時間もかかり、また価格もとても高い。それでいて、一つひとつを個々に配送するのはエシカル観点でも好ましくないと考えました。
メディアを通じてニーズがあることを確信し、自社メディアの反響を説得材料としてメーカー数十社に直で連絡をして思いに共感してくれた会社と出会い、契約をしました。並行してエンジニアとして働いていた知見も活かしてサイトを構築し、3週間ほどでリリースしました。
初動はPR TIMESのシェアが多かったのですが、ヴィーガンが違う件でもトレンド入りしていたタイミングで、かなり反響が良かったです。それで、50万インプレッション以上、5000クリック以上いきました。
確信したのはリアル店舗と若者への広がり
ー海外の文化を日本に持ってくる時に、来るなと確信したことはありますか?
小野寺:2つあります。1つ目は、東京にあるリアルの飲食店の数が増加したこと。東京の表参道・代官山にあるヴィーガンレストランが私が知る2018年の2年前と比べるとかなり増えていました。もっとも東京オリンピックに向けてのことと思いましたが、これは文化が来るなと思った。
もう一つが、インターンで入ってくれている学生の方がいるのですが、20代前半の若い学生層にエシカルが広まってることを感じたことです。YouTubeを出しても若い方が見てくれ、20歳前後の方で、環境問題も勉強している方が多い。自社で複数回に分けて実施したMeet upも、トータル20名強の参加者の方は、半分が20歳前後の若い方々でした。
American Meetup開催しました!
— Satoshi Onodera 🇺🇸🗼 (@satoshi_gfa18) August 22, 2018
アメリカで働くをテーマに、平日の夕方からWeWork Iceberg盛り上がりました!今回は30名以上の方にお越しいただきました。皆さま、本当にありがとうこざいました😊
またやりましょう!#americanmeetup pic.twitter.com/aS9sTQcw4K
ーヴィーガンはなぜそんなに若い人に広まっているんですか?
小野寺:ヴィーガンになる理由でいうと、環境・動物愛護・健康の3つがあります。私でいうと健康です。全体としては、環境・動物愛護の観点が8割程度と言われます。
ー何がそういう人に影響を与えているのでしょうか?
小野寺:様々な要因がありますが、近年はドキュメンタリー・映画観てと答える方が多くいらっしゃいます。
Netflixに「ゲームチェンジャー」というのがあり、2018年の動画なんですが、端的に申し上げると、今までにアスリートがレコード出すためには肉食が必須という考えが一般的だったんですが、菜食・プラントベースの方が記録が伸びるという内容です。世界一のボディビルダーもヴィーガンだったりします。
https://www.netflix.com/jp/title/81157840
NYはNo.1が集まる場所
小野寺:個人的にはアメリカで成功することを目指して取り組んでいます。今はコロナの影響で日本ですが、アメリカで勝つブランドを作っていくつもりです。
私がビザを取得して移住したニューヨークは、多くのプレイヤーがいますが、世界中のNo.1が集まる場所と考えています。新しいもの生まれるというよりは、世界のNo1が集まっている印象を持っています。
日本の文脈で一つニューヨークで成功された大きな例は、ロッキー青木さん。日本食の「BENIHANA」ブランドで大成功した人です。「日本人っぽくない日本人。アメリカ人以上に馴染んでいる。」と呼ばれる方ですね。
ヴィーガンやプラントベースは、ますます面白い領域になると思います。この記事を読んでご興味が出た方はぜひ、サイトを訪れていただいたり、ツイッターでDMいただけたら嬉しいです。
https://store.happy-quinoa.com/pages/plantbasedbox
まだコロナの状況がわからないですが、戻れるようになったらアメリカ事業も頑張っていきます。
まとめ
海外のカルチャーを日本で広げる小野寺さんから以下のようなエッセンスをお聞きできました。
・まずはメディアでファンを作れ
・メディアを運用するなら複数で検証すること
・ファンからの声でプロダクトやサービスが生まれる
メディアの育て方・考え方について興味がある方、MEDIA MAKERも出版した田端信太郎が主宰する「田端大学」で学ぶのもいかがでしょうか。
この記事を書いたのは:チェルシー
AI/海外テック系の記事連載・記事寄稿等行いながら、BIG WAVEではビジネス立ち上げや起業・副業・ブランディング等の記事を担当。テック系スタートアップ勤務。
Twitter:@chelsea_ainee