
表では聞けない「お金」の悩み~個人事業主が法人化するタイミングとメリットとは~
「個人での売り上げが何円を超えたら、法人化を検討した方がいいのか?」
「法人化することのメリット・デメリットは?」
今回は、実在する個人事業主Aさんが、元「最強の会社員」、そして現在は独立して法人も設立している田端信太郎に対して、「個人事業主の法人化」にまつわるいくつもの疑問をぶつけます。
個人事業主や副業・兼業をしている方、これからしようと考えている方は特に必見の内容です!
(※本記事は2020年10月5日に行われた、オンラインサロン「田端大学」の定例会の様子の一部を再編集し、記事化したものです。)
法人化した際の分かりやすい違いの1つは「税率」
個人事業主Aさんの、2019年の収入は320万円。しかし2020年は大幅な収入増加を見込んでおり、いまのペースだと約1,000万円まで伸びそうとこと。
法人化するべきかどうか、法人化することのメリット・デメリットについて、田端信太郎に相談しました。
Aさん
そもそも法人化することで、どんなメリット・デメリットがあるんですか?
田端
一番分かりやすいメリットは、「税金」ですね。例えば個人の場合、所得税が累進課税になっているので、所得が4,000万円を超えると個人の所得に対してかかる税率が55%になるんです。(※所得税45%+住民税10%)
画像:累進課税|対象となるのはどの税金?税率や計算方法は?
その一方で中小企業の場合、年間の所得が800万円を超える部分に関しては税率が23.2%で、800万円以下の部分は15%になります。
この税率の差が、個人事業主が法人化した際の大きな差ですね。それで、一般的には年間の所得が1,500万~2,000万円くらいからが、法人化した方がいいかどうかの分岐点だと言われています。
Aさん
逆に、1,500万円を超えるくらいまでは、法人化はしない方がいいですか?
田端
そこは本当にケースバイケースなんですけど、結局、法人化すると「法人住民税」が最低でも7万円は年間でかかってしまうんです。それに加えて、顧問税理士さんに例えば月で3万円くらい払うとすると、法人住民税と合わせて年間で40~50万円くらいのランニングコストがかかりますね。
自身への報酬は月額100万円で統一してる人も多い
Aさん
仮に法人化した場合、自分への報酬ってみなさんどれくらいにされてるものなんですか?
田端
ぼくの知っている人たちの平均値として、儲かっている中小企業のオーナー社長さんだと、毎月一律で100万円くらいにしちゃってる人も多いです。
Aさん
100万円っていう額には、なにか意味はありますか?
田端
いや、特にはないと思うんですけど、結局また個人での所得税の税率が、年間1,800万円のラインで7%も変わってくるんですよね。(※税率33%⇄40%)
Aさん
ああ、そういうことですね。ちなみに、自分はいま子供がいるんですけど、報酬の設定額によって支払う保育料が変わってくるってこともありますか?
(※保育施設の保育料は、基本的に父母の所得情報に基づいて決定されます)
田端
ああ、それはいま確証を持っては答えられないけど、可能性としてはあり得ますよね。納めている住民税の額で保育料は決まるはずなんで。
これは極端な例ですけど、すでに何個も会社を持っている人がまた新しく会社を立ち上げた場合、その新しい会社からの報酬は0円にするってことも珍しくないです。
自分への給料を自分で決められるっていうのは、仮に法人化した場合の、個人事業主とは大きく違う点の1つですね。結局、すごく雑な言い方をすると法人と個人の2つの貯金箱があるようなものなので。
どっちにどれくらいの比率で配分するのが、自分的にベストなのかを考えることが大事だと思います。
「経費にできる=お得でラッキー」というわけではない
Aさん
あと、これもすごく気になっている点で、会社にすると、経費として計上できる金額が増えるイメージがあるんですが、このあたり実際のところはどんな感じですか?
田端
まず賃料については、自宅を社宅にした場合、賃料の半分を経費として計上することはできます。あとは中小企業の場合、年間800万円までの接待交際費は「損金算入」することができるんですね。
(※損金:会社から出ていく「費用」や「損失」等のこと)
Aさん
年間800万ってことは、月で割るとだいたい65万円くらいってことですね。ちなみに接待交際費って、いまZoom上で聴いてくださっている方も含めて、どこからを接待交際費で、どこからを個人でのプライベートな支出にしてるんですか?ここの境界線が難しいなと思って・・・。
田端
まず大前提として、もちろん仕事に関係のある支出は経費として認められます。逆に、仕事に関係のない支出は経費にはなりません。あと、仕事内容によっては、飲食が接待交際費になることもあれば、研究費、取材費になることもあります。
じゃあどこからどこまでが仕事なの?という部分の話だと思うのですが、ここは本当に難しくて、解釈が人によって違ってくることもあるんですね。
ただ、絶対にやっちゃだめなのは「売上を隠すこと」「実体のない支出を作ること(=嘘の領収書を発行する等)」、この2つは完全にアウトです。そこの線引きだけは、絶対に徹底しておく必要がありますね。
Aさん
たしかに。境界線上のものが人によって解釈が違うことがあっても、あるものをないことにしたり、逆にないものをあるように申告することは、絶対にダメですね。
田端
あと、これもまたそもそも論の話で、なんとなくの世間のイメージとして「法人化すれば経費にできる範囲が広がってラッキー」みたいなイメージがあると思うんですけど・・・。
ただ、当たり前ですけど、そもそも売り上げがないと、自分への給料も経費も払えないですからね。経費にしたから何かがお得になるというわけではなく、自分の経営している法人からキャッシュが出ていっているのは、事実なわけで。
個人と法人で違うのは、個人だと「稼ぐ→税金を払う→残った中から生活をする」という順番ですが、法人だと「稼ぐ→経費として使う→税金を払う→残った中からプライベートの費用を払う」という順番になって、要は税金の対象になる額が変わるということです。
Aさん
おっしゃる通りですね。要点はその税金の対象になる額がいくらになったときに、法人化のメリットがあるのかということですもんね。
田端
最後に、ぼくから付け加えて言うことがあれば、「会社を作る」こと自体って、別にそんな大したことではないですよ。会社なんて、ただの書類の束ですからね。なんてことないです。
それよりは、法人の税制を経験することによって、世の中の見え方が変わるってことの方が大きいかもしれないです。
「あ、税制度によって、世の中とか人とかの動きってこれだけ大きく変わるんだ!」ってことを、実感できると思います。
そういった世の中の見え方の変化も含めて、Aさんの場合、今年の見込み収入が1,000万円くらいで、今後も増えていく方向なのであれば、もういまからでも法人化した方がいいかもしれないですね。
Aさん
アドバイスありがとうございます。
正直、今日の会が始まる前は、漠然と「そろそろ会社にしたほうが得なのかな?」くらいに思っていただけだったんです。ただ、実際にお話を伺い、法人化することで自分を取り巻くお金の流れが変わって、その結果、世の中の見方が変わるという話がすごく印象に残りました。
実は、他の人の前で自分の収入を公開することも、最初は結構抵抗があったんです。ただ、思い切ってそこもオープンにしたことで、田端さんはじめ、塾生の方からもチャットで色々とコメントをいただくことができて、すごく学びの多い時間にすることができました。
結局は、自分でやってみながら学ぶのが一番だなと改めて思ったので、これから法人化する前提で動いていきます。
田端大学ならこういったディープな会が毎週あります
表ではなかなか語りづらい面もある、お金や税の話。
定例会当日は、Aさん以外にも他に2名の方が、田端信太郎に「お金」にまつわる悩みを相談しました。
田端大学では、毎週こういったクローズドな環境で、今回のようなディープな相談から、マーケティングや経営、マネジメントに関するプレゼン大会まで、さまざまな活動が行われています。
ビジネスパーソンとしてのレベルアップを目指して、他のサロンメンバーとも切磋琢磨のできる環境です。
ご興味のある方は、ぜひ下のURLをクリックして詳細をご確認ください!
そしてこの度、塾長の田端信太郎が「お金」に関する本を出版しました。
タイトルは「これからのお金の教科書 年収の伸びしろがケタ違いになる視点65」。
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文:藤本 けんたろう