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LINE PayがPayPayをぶち抜く戦略はあったか? 田端塾長が「これまでで最も偏差値が高い」と認めた難題で勝利したプレゼンを振り返る

オンラインサロン「田端大学 ブランド人学部」では、毎月の定例会でプレゼンで競い合い、1名のMVPを決定しています。

田端信太郎が「これまでの偏差値のピーク」と位置付けるほどの難題が設定された、2019年11月の定例会を振り返ります。

お題は「LINE PayがPayPayに勝つ戦略を考える」。見事MVPを獲得された葛上洋平さんのプレゼンテーションをピックアップ紹介します。

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葛上洋平:ビジネス系Webメディア「新R25」編集デスク、SEO責任者。慶應義塾大学を卒業後、サイバーエージェントを経て、子会社の新R25へ。マンガ・アニメ好きのオタク。

課題図書は1999年刊行の不朽の名著『情報経済の鉄則』

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2019年11月の定例会で、田端信太郎より提示された課題図書は『情報経済の鉄則』。

著者の1人は、広告オークションの設計やクエリ予測などで、Googleを世界一に導いたと言われている同社チーフエコノミストで、経済学者としての顔も持つハル・ヴァリアンです。

「ロックイン」「正のフィードバック」「規格化と標準化」など、ネットワーク型経済、デジタル経済下での鍵となる概念を、詳細な事例を用いながら紐解きます。

1999年に刊行され一度は絶版になったものの、その内容の普遍性の高さから、2018年に復刊。

令和時代のいまも読み続けられている、656ページの超大作です。

発表者は、本書で登場する概念を用いながら「LINE PayがPayPayに勝つ戦略」をプレゼンします。

戦略の違い。LINE Pay「個人を取りきる」PayPay「ゴリ押し」

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定例会当日のプレゼンにて、MVPに選出された葛上さんは、まず「LINE PayとPayPayそれぞれの戦略」の分析から始めました。

葛上さんの分析は、当時(2019年11月時点)、LINE Payは「買い手を取りきる戦略」、PayPayは買い手と売り手を一気に取りにいく「ゴリ押し戦略」を敷いているというもの。

決済アプリは機能による差別化が難しいため、買い手(=利用者)と売り手(=店舗)の数によって、勝敗が大きく左右される市場です。

つまり、「ネットワーク効果」をいかに作るかが、重要になってきます。

※ネットワーク効果とは※
ある人がネットワークに加入することによって、その人の効用を増加させるだけでなく他の加入者の効用も増加させる効果。
情報通信白書より)

「ネットワーク効果」の観点から見ると、一見どちらも大胆なポイント還元やキャッシュバックキャンペーンなどを仕掛けているように映った両アプリの戦略は、全く違う色味を帯びてくるのです。

先述したように、LINE Payの戦略は「買い手を取りきる戦略」

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引用:葛上さんの当日のスライド資料より
(以下引用する資料は、全て葛上さんの当日のスライド資料より)

「10円ピンポン」や「お年玉キャンペーン」など、「買い手同士」の送金を促すような施策を、重点的に実施しています。

決算資料においても、「送金件数」の増加を強調するなど、様々な面からLINE Payは「買い手を取りきる戦略」を展開していることが分かります。

一方で、PayPayのとった戦略は、買い手と売り手を一気に両方、取りにいく「ゴリ押し戦略」

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タレントの宮川大輔さんが大胆なキャッシュバックキャンペーンを紹介するCMや、どこのお店に行っても貼られているPayPayのシールなどは、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

PayPayの決算資料では、「決済回数(=買い手と売り手のやり取り)」の増加をアピールしているように、やはりPayPayは「買い手と売り手」を一気に取りにいこうとしていることは、明確です。

そして、モバイル決済市場を押さえるなら、やはり買い手同士の「送金」ではなくて、買い手と売り手との「決済」としてのポジションをとることが重要。

「買い手を取りきる戦略」を進めてきたLINE Payに、勝機はないのでしょうか...?

LINE Pay、起死回生の一手は「事前決済」。そして「ミニアプリ」との連携

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ここで葛上さんが着目したのが「キャッシュレスの本質」

「キャッシュレス」と言えば、その語義からついつい「現金を持たないこと」に注目がいきがちですが...。

葛上さんは、そうではなくキャッシュレスの本質は「決済タイミングの自由化」なのではないかと提言します。

つまり、店頭で支払いの際に、現金ではなくスマホをかざしてピッとすることすらも、ユーザー体験として、まだまだ改善の余地があるのではないかということです。

そういった前提を踏まえ、葛上さんが提案した戦略は、決済のタイミングを前倒すことで、「事前決済と言えばLINE Pay」という想起をとること。

そうすることによって、LINE Pay逆転の道が見えてくると言います。

そして、その鍵を握るのが、当時その構想が発表されたばかりだった「LINEミニアプリ」の活用。

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LINEミニアプリとは、LINE内にて、商品の予約や注文、決済、会員向けサービスなどを提供できるアプリケーションです。

編集部注:2020年7月2日にアプリを登録する企業のエントリー受付を開始

LINE Payは、LINEミニアプリを用いて事前の注文・決済を完了させることにより、買い手と売り手、両方にメリットを訴求することができます。

まず売り手(=店舗)に対しては、ゼロからアプリを開発するよりも、安いコストでLINE上にアプリを開発できることを訴求。

そして買い手(=利用者)に対しては、待ち時間がなく、注文した商品を受け取れるという快適な購買体験を訴求するのです。

このような両者へのメリットを打ち出すことによって、LINE Payはモバイル決済のポジションをPayPayより奪還できるのではないかと提案しました。

LINEが持つネットワークの価値はPayPayの16倍

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プレゼン終了後、田端信太郎より投げかけられた問いは、

「もしスタバから、『別にLINE上に作らなくても、自分たちでゼロからアプリを作れます』って言われたら、どう返す?」

というもの。

たしかに、資金力や開発力のある企業であれば、自社でゼロからアプリを作ること自体は、それほど難しいことではないはずです。

では、わざわざLINE上でアプリを開発する理由は?

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それは、「メトカーフの法則」に基づいた「LINEのユーザーの多さ」が決め手になると言います。

「メトカーフの法則」とは、『情報経済の鉄則』の記述を引用すると、「ネットワークの価値は、ユーザー数の2乗に比例する」という法則です。

具体例を挙げて説明すると、MAU約8,000万を抱えるLINEのネットワークの価値は8,000万×8,000万。

一方で、登録者約2,000万人のPayPayのネットワーク価値は2,000万×2,000万となります。

その結果、両陣営のネットワークの価値は16倍もの大きな開きとなり、つまりは冒頭でその重要性を述べた「ネットワーク効果」を、LINE Payは作れる可能性が十分にあるということです。

そして葛上さんは、田端信太郎からの「ユーザーのメリットに立脚した、とても良い提案でした」という言葉とともに、見事にMVP受賞となりました。

ハイレベルかつ本質を突いた議論こそ、田端大学の醍醐味

「派手な札束の殴り合いをやっててスゴいなあ。。。」

筆者がLINE PayとPayPayとの覇権争いの様子を、テレビやネットニュースなどで見ていた過去の印象です。

しかし、そのビジネスモデルの特性やそれぞれが持っているアセット、決算資料などにまで着目して分析すれば、両社は全く違った戦略展開をしていたことに気づけるのだなと、脳天を撃ち抜かれました。

田端大学では、こうしたハイレベルな議論を、毎月違った課題図書やお題をベースに行ない、そしてMVPを決定しています。

今回は特に、「LINE PayはいかにしてPayPayに勝つか」というお題が出た翌日に、LINEとヤフーの経営統合が報道されるという、田端大学がいかに世の中の核心を突いた議論をしているのかが、より顕著になった会でした。

こういったハイレベル、かつ本質を突いた議論に交わりたい、他社の猛者たちと力試しをしたいという方は、ぜひ田端大学へいらしてください!

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文:藤本 けんたろう

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