
五感を磨くのはロジックではなく経験。“良いホテル”を知ることで、見えてくる世界とは。
ブルガリ、ティファニー、アルマーニ、ヴェルサーチ。
なぜ、ラグジュアリーブランドが、こぞってホテルをプロデュースするのか?
その理由を考えてみたことはありますか?
ホテルというのは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感をジャックし、「世界観」に浸る場所です。旗艦店に買い物に行くよりも、そのブランドの服を身につけるよりもより深く、長く、そのブランドの世界観をユーザーに堪能させることができる特別な場所です。
画像引用:BVLGARI HOTEL TOKYOウェブサイト
2023年に開業が予定されている日本発のブルガリホテルイメージ図
ホテルは、ただ泊まるためだけの場所ではありません。
不動産、飲食、ファイナンス、マーケティング、サービス、そしてブランディングなど、ビジネスのすべての要素が絡み合い、ビジネスの総合格闘技とも言われる「ホテル業」を深堀りします。
良いホテルとは?を追求せよ
SNSで話題のTHIRD石垣島というホテルをご存知でしょうか?
Booking.com、一休、Reluxの石垣島ホテルランキングで1位を獲得(※最高値)。宿泊以外の付加価値の提供をテーマにした「ライフスタイルホテル」として2020年7月に開業した今大注目のリゾートホテルです。
あの…大変な時期ではありますが…石垣島に…THIRD石垣島というリゾートホテルを開業しました…。
— 佐々木優也 / THIRD石垣島 (@hksh) August 16, 2020
オールインクルーシブなので、宿泊代にお食事もアルコールも含まれていて、好きなときに何度でもお楽しみいただけます…。
どうかリツイートでお祝いしてくださったら、めちゃくちゃ喜びます… pic.twitter.com/qRwaDo72ix
2021年3月の田端大学定例会では、「良いホテルとは?」をテーマにTHIRD石垣島CEO佐々木優也氏と塾長の田端信太郎が対談しました。
コロナ禍の今だからこそ、あえてホテルについて語ります。
経営者の思いをカルチャーに落とし込み、現場のサービスで体現させる
佐々木氏は「良いホテル」には
①基本機能
②適切なゲストに対してホテルの世界観を体験させ続けられる
の二つが必要だと言います。
基本機能とは、サービスが良い、デザインがおしゃれなどホテルに宿泊する際の基本的な要素を指しています。
基本機能を良くするために必要なこととしては、SNS等のポジティブな感想に惑わされることなく、まず「現場を知ること」だと佐々木氏は言います。
実際にお客としてサービスを受けることで、例えば髪の毛が落ちていて清掃が行き届いていないという問題点が見つかり、改善を繰り返すことで、基本機能を高めていきます。
基本機能の良し悪しについては、2つの要素に依存すると、佐々木氏は言います。1つはカルチャー、もう一つは経営者の性格やコミット力です。
カルチャーを醸成するためにはビジョン、ミッション、バリューを明確化し、従業員に理解させる必要があります。
THIRD石垣島であれば、開業準備の忙しい時期においても、「カルチャーを作らなければ良いホテルは作れない」という考えのもと最優先事項として、カルチャーを浸透させるミーティングを繰り返し実施されていました。
また、開業後も従業員を褒めるときはバリューに基づいて実施することで、カルチャーを浸透させています。
(2021年3月8日に行われた田端大学の定例会の様子。)
カルチャーを重視するのか、豪華な装飾を集めるのか。
経営者がホテルを通じて何を成し遂げたいのか。ゲストにどんな世界観を提供したいのか。ホテル業では、こうした経営者の意思が、現場のサービスに反映される、と佐々木氏は言います。
五感に対して20時間、世界観を提供し続けるのがホテル
「良いホテル」の方程式の2つ目の要素である「適切なゲストに対してホテルの世界観を体験させ続けられる」とは、ターゲットを明確にしてそのターゲットが求める世界観をサービスで表現することです。
20代にとっての良いホテルと50代にとっての良いホテルは全く異なります。
例えばハイテク技術で訴求したり、格式高い建物で訴求するようなホテルにもありますが、THIRD石垣島では20代〜30代をターゲットとし、サイトでは30代のモデルを活用して雰囲気を表現し、どんな体験ができるかを表現しています。
ターゲットに良いホテルと思ってもらうためには、サービスを受けるタイミングだけではなく、認知の段階から予約、体験、共有までコンセプトを一貫して、世界観を表現する必要があります。
ホテルの接点はあらゆるところにあり、建物の景観やエントランスを入った時の香りや音楽、料理の味やシーツの肌触りなど五感に対して共通のコンセプト、世界観を体感させることができるのがホテルの魅力です。
宿泊の利用の場合、1泊だと平均20時間の滞在時間があると言われており、レストランやカフェなど他のサービス業と比べても長時間、世界観を提供できます。
ここで、田端信太郎も自身のホテル論を語ります。「ラグジュアリーブランドがホテルをプロデュースするのは必然。表参道などの旗艦店に行ったとしてもせいぜい1時間しか世界観を提供できない。ホテルであればアメニティだったり、食事だったり、BGMだったりを4泊すると80時間分世界観に浸らせることができる」
また、佐々木氏は「良いホテルに泊まると五感がレベルアップしているのが自分自身で分かる。五感を磨くのはロジックではなく経験。そのためいろんなサービスを経験するように心掛けている」とも言っています。
世界観の醸成はホテル業界以外にも当然該当する
今回の対談のテーマはホテル業界についてでしたが、その内容はホテル業界、サービス業界以外でも活かせるものでした。
メーカーの場合も、広告や自社サイトなどタッチポイントで訴求することと、商品自体のデザインを統一のコンセプトで表現をすることで世界観を作ることができます。
また、統一コンセプトを従業員に浸透させるためのカルチャーは不可欠であり、どのようなカルチャー、コンセプトを打ち出すのかは経営者の意向が大きく影響するものです。
田端大学では、様々な業界のゲストを招いての勉強会を行っています。自分が属する業界ではない、かつ最前線の情報が経営者本人から聞ける機会は、日常生活にはなかなかありません。新しい知識・情報を取り入れたいと思っている方はぜひ入学してみてください。
この記事を書いたのは:高岸朋矢
中堅サラリーマンに役立つ、セールス、マーケティング、マネジメントのテーマを中心に執筆。田端大学第1期生。本業はHRテック企業のマネジャー。
Twitter:https://twitter.com/takagishitomoya